●刻逆
それは、突然だった。
「何か、来……!」
そう思った時には、鬼や妖怪たちが暴れ回っていた。
今までこんなことはなかったのに。
こんな強大な妖力など、感じたこともなかったのに。
陰陽師も予測できなかった。
何が起きているのか、誰にもわからない。
ただわかるのは、次々と、人々が消滅させられていることだけ。
殺されているのではない。
"消されて"いるのだ。
いつも菓子をくれるおじさんも。
特別な笛をくれた師も。
仲良しの昼寝ともだちも。
優しい両親も。
みんな、失くなっていく。
「やめて……やめてよ……」
力なく座り込む真輝の前に、妖怪が歩み出る。
――たすけて、あかつき。
強大な魔力が膨れ上がり、真輝を包み込む。
「其を屠らむなぞ、我が許さぬ」
それは赤月。災厄の獣。
目の前の妖怪を引き裂き、別の妖怪に噛みつき、蹴り飛ばす。
どこからか現れた、不思議な力を使う者たちと共に戦うも、その戦力差は大きく、妖怪たちの勝利に終わった。
『チェインパラドクス』(c)龍烏こう絵師/トミーウォーカー